室生と大和富士周辺  その9

真言宗、戒長寺(TEL 0745-82-2841)

 国道165号線の榛原駅と室生口大野駅間のバス停「山辺」から更に北へ歩いて、少し急な山道を2キロ辿って行くと少し開けた村落で、急な石段を上がった標高600mの高台に「戒長寺(かいちょうじ)」があります。第33代用明天皇の勅願により息子の聖徳太子が建立し、後に弘法大師空海が修業した霊場で、俗に戒場薬師と称する古刹です。藤原時代には地方の戒律道場として隆盛を極めたお寺で、9体の藤原仏を伝来していますが今は少し寂れ、現在の本堂、庫裏、鐘楼門等は、1864年(元治元年)頃の再建です。寺の裏山を薬師山と云い、また、寺域周辺に護摩山、大門、堂阪等の小字が残り往時の隆盛が偲ばれます。
戒長寺の国重文「梵鐘」

 「戒長寺」本堂に安置されている本尊は、薬師如来像ですが、鐘楼門に吊られている国重文「梵鐘」には正応4年(1291年)3月13日の鋳造銘が有り、また、梵鐘の周りには仏法を守り、薬師経を読む者を守護する「十二神将」が陽鋳されています。そして、鐘楼門の直ぐ横に植わっている「お葉付き銀杏」は、樹齢700年、銀杏(いちょう)の進化の過程を示すものとして貴重なので、昭和53年奈良県の指定樹に加えられ、県天然です。また、境内の東側に鎮座する「戒場(かいば)神社」横の巨樹「ホオノキ」も推定樹齢300年を越え、幹周6.5m、樹高15mで、県天然、お葉付き銀杏と共に戒長寺のシンボルです。
万葉歌人「山部赤人の五輪塔」

  戒長寺の石段を下りて、戒場(かいば)の里の道を西へ向かい、大和富士の額井岳(ぬかいだけ)の方へなだらかな山道を約1キロ登って行くと、額井岳の東麓に達し、道が少し右へカーブした角の左手に休憩の東屋が建ち、少し奥まった所にひっそりと万葉歌人、山部赤人の墓と云われる「五輪塔」が西の飛鳥の方を向いて建っています。奈良時代の人、山部赤人は柿本人麻呂の後を受け、宮廷歌人として聖武天皇に仕えた下級官吏で、多くの歌を残し736年(天平8年)没

 田児の浦ゆ うち出でて見れば真白にぞ
  不尽の高嶺に雪は降りける 万葉集巻3−312




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