奈良市の東端「田原」「水間」から「山添村」  その7

 山添村指定文化財「塩瀬(しおせ)地蔵座像」

 「森林科学館」の前の車道を南へ行くと、名阪国道の「神野(こうの)口インター」へ至りますが、北へ向かうと、県道80号奈良名張線のバス停「北野」へ至るので、平坦な車道を北へ行くと、車道の左側奧に「塩瀬地蔵」が祀られています。像高約160cmの磨崖仏で、地蔵堂の火災で焼けただれていますけど、立体感に富んだ鎌倉時代の彫刻です。地蔵の前20m下に山添村北野から箕輪へ通じる旧伊勢街道が残っており、昔の通行人が旅の安全を願って建立しました。また、手洗鉢の水で目を洗うと、眼病がたちどころに治る霊験あらたかな地蔵さんです。毎月24日が縁日で、毎年4月24日と9月24日地蔵講があります。
 大師の「硯石(すずりいし)」

 「塩瀬地蔵」から更に北西に行くと、車道から右へ40m入った木立の中に「大師の硯石」があります。幅4m、長さ3mの大岩で、岩上に深さ20cmほどの窪みがあり、水が溜まっていますが、溢れもせず、涸れもせず、多少の増減はありますが、常に10cmばかり満たされ、まったく不思議な大岩です。その昔弘法大師の空海が神野山へ登られて、村人らに「何か困っていることはないか」と訪ねたら、「塩がなくて困っています」と答えたので、「それならば、山塩が出るようにしてやろう」と云われて、錫杖で岩を叩くと、ポッカリ穴が開き、塩水が湧き出して来ました。それからこの辺りを「山添村大塩」と呼んでいます。
 奈良県指定名勝「鍋倉渓(なべくらけい)」

 「大師の硯石」の所から大きな道路を更に進むと、水も流れてないのに橋が架かって、上方へ550m、下方へ100m、幅平均25mに渡り黒い巨岩怪石が累々(るいるい)と続いています。これが第一種特別地域の「鍋倉渓」です。堆積した岩のそれぞれが黒くすすけた色をして鍋の底を連想させるのでそう呼ばれていますが、これらの大石は、昔々神野山の烏天狗と伊賀の青葉山の烏天狗が喧嘩をして、青葉山から投げられた大石です。なお、石の下をかなりの水が流れて音がさらさらと聞こえ、伏流水の湧水は「大和の水」に選定されています。また、ここでは親孝行者だけが水の中に浮かぶ死んだ親の顔を見ることが出来ます。
 「天狗岩」

 「鍋倉渓」に沿って木の階段を600m上がると、「四つ橋」があり、そこを渡ると、木立が生い茂った中に巨岩がごろごろと群をなしつつ転がっています。これが神野山に住んでいた烏天狗の象徴岩「天狗岩」です。写真に撮ると、岩と岩の間に「どんずり坊(戎さん)」の霊が現れると云われています。また、それぞれの岩の形が男女のシンボルの様に見え、あたかもそれらが寄り添って豊饒(ほうじょう)の祈りを捧げた様にも見えるとか云われています。なお、烏天狗は仏教の経典に載っている大鳥(迦楼羅)を先祖とし、迦楼羅(かるら)は、金翅鳥(きんしちょう)とも呼ばれ、両翼を伸ばすと336万里もある大鳥でした。




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