東大寺  その5

 共に国宝の「鐘楼」と「銅鐘(奈良太郎)」

 「大湯屋」南側の崖を上がると、「鐘楼」に日本三名鐘「勢いは奈良の東大寺、形は宇治の平等院、声は近江の園城寺(三井寺)」と云われる「梵鐘」の1つが吊られ、752年(天平勝宝4年)東大寺創建当初の鋳造で、口径2.71m、高さ3.865m、重さ26.3t、龍頭を破損しているが、天平文様が鮮やかに残る橦座(しょうざ)を昔撞いたら三日三晩鳴りやまず、今は座の下を法会の時と毎夕暮六つに撞き、「鐘楼」は1210年頃(承元年間)栄西の再建、斗(ます)と肘木の組合せ斗供(ときょう)に大仏様と唐様を混ぜた独特の様式で、音響を分散さす為に壁が無く、音を籠らす為に屋根を大きく構成しています。
 俊乗堂(しゅんじょうどう)

 鐘楼の北側に元禄年間、公慶上人が重源上人の遺徳を讃えて「俊乗堂」を建て、快慶作の国宝「重源上人坐像」を安置しています。俊乗坊重源は、1121年(治安元年)京都に生まれ、父は紀季重。13歳で醍醐寺に入って密教を学び、後に法然上人の門に入り、念仏の人となって、1167年(仁安2年)入宋し、翌年帰国。1180年(治承4年)平重衡が大仏殿を焼くと、翌年60歳を過ぎた彼が造東大寺の勧進職に任ぜられ、10数年の歳月をかけて東大寺の再興を成し遂げ、再建に当って、天竺様(大仏様)と呼ぶ宋風建築様式を取り入れ、再建の功により大和尚の号を受け、1206年(健永元年)86歳で入滅しました。
 行基堂(ぎょうきどう)

 また、「俊乗堂」の東に建つのが「行基堂」です。お堂は雨漏りを防ぐための雨仕舞と装飾を兼ねた鉄製の露盤(ろばん)の上に宝珠を乗せる宝形屋根をもつ方一間の正方形で、江戸時代に建てられた小ぶりなお堂なのに四隅の円柱が太くがっしりしています。堂内には寄棟造の屋根をもつ唐様の厨子が置かれ、以前は「俊乗上人坐像」を安置していたので、お堂を「俊乗堂」と称していた様ですが、現在は、公慶上人の発願で江戸時代に作られた像高80.9cmの「行基菩薩坐像」を安置しています。行基は、天平の大事業であった大仏造立に欠かせなかった人で、大勧進に尽力されたけど、開眼法要を見ずに82歳で入滅しました。
 お水取りが行われる「二月堂」

 「二月堂」は、回縁を持ち、斜面に建つ懸崖造で、752年(天平勝宝4年)女帝の孝謙天皇の勅願により、良弁僧正の高弟、実忠和尚が創建しました。本尊は大観音「金銅聖観音立像」と、修二会の本尊で実忠和尚が難波の海岸で拾って、今も人肌の温もりがある七寸(約21cm)の小観音「十一面観音立像」で、共に秘仏です。また、「二月堂」の真下、芝の斜面に赤い鳥居の小さな社が建ち、その隣に若木「良弁杉」が植わっているが、かって、樹齢約600年、高さ7丈の巨木があり、開山良弁僧正が2才の時、大鷲にさらわれ、木のてっぺんに置き去りにされたが、昭和36年9月11日第2室戸台風で倒れ、今はその三世です。
 若狭井のある国重文「閼伽井屋」

 「二月堂」の修二会(お水取り)で、本尊「十一面観音」に供える香水の閼伽(あか)は、二月堂右下、屋根の四隅に鵜を模った雨漏り防止の留蓋瓦が葺いてある閼伽井屋の若狭井から、3月13日午前1時半頃汲まれます。これを「お水取り」と称し、普段は全く水が枯れているのに、不思議な事に、3月12日の深夜、「お水取りの儀式」が行われる時だけ、わざわざ若狭国(福井県小浜市)の遠敷(おにゅう)川の水が沸き出します。そこで、閼伽井屋の中で香水が湧き出す所を「若狭井」と云い、また、毎年3月2日若狭の鵜ノ瀬で「お水送りの儀式」が行われ、その関係から福井県小浜市と奈良市は国内の姉妹都市の1つです。
 法華堂(三月堂)の「北門」

 「二月堂」の屋根のない南側の石段を下りると、上と下の3段に波形や唐草などの模様が刻まれ、石段下の南側に建つ四脚門は、一見、「二月堂」の門の様に見えますが、実際は南隣の「法華堂」の「北門」で、鎌倉時代に建てられ、屋根は切妻造、本柱は円柱ですが、四脚は面取りした角柱を使用し、門の左右を貫通している梁は、重源上人が考案した大仏様と同じ建築様式を踏襲し、地震や台風による横揺れに対し強度を増しています。また、北から門を入り、左に曲って、東側へ行くと、「龍王之瀧」の前に芭蕉の句碑があり

 水取りや 籠(こもり)の僧の 沓の音  芭蕉
 国宝の「法華堂(三月堂)」

 「二月堂」南隣に建つ「法華堂」は、大仏殿の創建よりも古く、733年(天平4年)良弁僧正が創建の「金鐘寺(こんしゅじ)」の一堂、東大寺最古の建物です。華厳宗の根本道場として尊ばれ、毎年旧暦3月法華会を催し、「三月堂」とも呼び、堂を横から見ると、回り廊下の手摺、及び、屋根の途中に段差があるが、これは、北側に寄棟造で建てた天平時代の堂に、後から南側に入母屋造の礼堂を鎌倉時代に付け足したからで、堂内に羂索仏で日本最古、高さ3.62mの本尊「乾漆不空羂索観音」、脇侍日光・月光菩薩を始め、乾漆金剛力士、帝釈天、梵天、執金剛神、四天王ら天平時代を代表する国宝仏を多数安置しています。




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