飛鳥  その5
 国史跡「酒船(さかふね)石」

 「岡寺」から真っ直ぐ西へ下らずに、途中から北へ行くと「酒船石」が在ります。これも飛鳥の謎の石で酒を搾(しぼ)るのに用いたとか、帰化人が灯油を作るのに用いたとか、丹砂を水簸して朱を採ったとか、諸説入り混じり、色々云われていますが、最近同じ様な石が、伝飛鳥板蓋宮跡の少し西から発掘され、庭園のエクステリアの1つと云う説が有力になったけど、今以て何の為の石なのか、はっきりした事は判らず、石は、長さ5.5m、幅2.3m、厚さ1mの花崗岩で、その上面に写真の様な円や楕円の浅い窪みが彫られ、それらの窪みを細い溝で結んでいます。なお、北へ、山を下りた所で亀形の石が最近発掘されました。
 酒船石遺跡「小判形石造物」「亀形石造物」

 「酒船石」のある山の北側、崖の下から平成12年発掘された「小判形石造物」「亀形石造物」は、財団法人明日香村観光開発公社によって管理され、文化財保存協力金として拝観料300円払うと、9:00〜17:00(入場は16:00まで)見学できます。「日本書紀」の斉明天皇2年の条に記された「宮の東の山に石を累(かさ)ねて垣とす。」「石の山丘」に符号する砂岩の石垣は、平成4年に丘陵北斜面で既に発見されていましたが、平成12年の発掘で新たに出土した2つの石造物は、石槽になっており、造形的に優れ、組合せて導水施設を造り出している事が明らかになり、立地から祭祀空間の施設と想定されました。

 飛鳥民俗資料館(TEL 0744-54-3655)

 「酒船石」から北へ少し行き、左(西)へ曲がって山を下りたバス通りの所が「飛鳥民俗資料の家」で、元は「甘橿丘」の北、明日香村大字雷(いかずち)で島田家の住宅でした。江戸時代の中期、1700年頃(元禄・宝永頃)に建築され、1820年頃(文化・文政頃)かなり改造が加えられ、昭和51年解体して移築し、今は飛鳥地方の民俗資料の家として保存され拝観料200円で、9:00〜16:30開放され、月曜(祝日の場合は翌日)は休館です。館内に養蚕、染色等に用いられた道具類や、明日香村の年中行事、伝承などに関する資料を展示し、併設しているお茶席「眞神荘」では、お庭を眺めながら抹茶が頂けます。
 奈良県立万葉文化館(TEL 0744-54-1850)

「酒船石」の北、「飛鳥民俗資料館」の裏(東)に平成13年9月「奈良県立万葉文化館」が開館しました。万葉文化館は「万葉集」を中心とした日本の古代文化に関する展示を行う万葉ミュージアム、調査・研究を行う万葉古代学研究所、万葉集の情報収集・提供を行う万葉図書室からなります。敷地内の飛鳥池工房遺跡からは、日本最初の貨幣とされる富本銭が発見されました。一般展示室は、万葉時代当時を実際に体感できるような工夫が随所に見られ、しばしゆったりした気分が味わえます。ここに直接来るには、橿原神宮前駅より「岡寺前」行バス「万葉文化館西口」下車。開館10:00〜17:30、水曜が定休日。入館料は一般600円。
 飛鳥寺跡(安居院 TEL 0744-54-2126)

 「万葉文化館」から北へ廻って出ると、集落の西に国史跡「飛鳥寺跡」が在り、588年(崇峻元年)に蘇我馬子が飛鳥の真神原の地にいた衣縫造の祖・樹葉(このは)の家を取り潰して、596年(推古4年)に完成した我が国初の本格的な寺院で、飛鳥三大寺の1つ「法興寺(ほうこうじ)」です。「大法興寺」、「元興寺(がんごうじ)」とも号し、馬子の子・善徳が寺司で、創建当時の境内は斑鳩「法隆寺」の3倍も在ったが、現在は1/20に縮小され、真言宗豊山派鳥形山「安居(あんご)院」と云い、645年の大化の改新前、境内の槻(つき)の木の下で、蹴鞠をしていた中大兄皇子の靴が脱げ、中臣鎌足が拾いました。
 日本最古の仏像「飛鳥大仏」

 なお、飛鳥寺中金堂のご本尊であった「飛鳥大仏」は、日本最古の丈六の仏像、国重文「銅造釈迦如来坐像」で、奈良「東大寺」の大仏さんより150年も早く、606年(推古14年)渡来系の鞍作止利(くらつくりノとり)が造り、奈良「東大寺」の大仏さんとは、目も鼻も顔の形も、全て違い、法隆寺の釈迦三尊と共通で、止利式の仏像の特徴をよく示し、顔は面長で眠った様な目の上下の瞼が同じ形の弧を描き、杏仁形(きょうにんけい)の目に、仰月形(ぎょうげつけい)の唇をして、全体に災禍の傷痕が痛々しく、後世の補修が多いけど、それでも顔面や右手中央三指に当初のものを残し、高さ2.77m、なお、造仏時に金堂の戸よりも高く、堂内に納まらないので、諸の工人等が議して曰く、「堂の戸を破ちて納れむ」と云うのを、秀れたる仏師鞍作鳥が戸を壊たずして堂に入れ、即日に設斎したが、1196年(建久7年)雷火のため堂塔が残らず焼失し、本尊は仏頭と手の一部をとどめるだけとなり、江戸時代に本居宣長も拝しました。



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