五條市  その1

 荒坂峠の「万葉歌碑」

 御所市から国道24号線を南下すると、五條市で、国道と平行するJR和歌山線の「北宇智駅」辺りで右折して西へ向うと、荒坂峠(標高210m)に至り、「荒坂池」の所に「京奈和自動車道」の橋脚が建ち、大きな池と反対側の道端に万葉歌碑が建っています。

 たまきはる 宇智の大野に馬並
 (うまな)めて 朝踏ますらむ
  その草深野   万葉集巻1−4

舒明天皇が宇智野で遊猟(みかり)をされた時、中皇命(なかつすめらみこと)が詠われた歌のようです。
 栄山寺(えいさんじ)の国宝「梵鐘」

 五條市、音無川の畔に、かって栄華を極めた藤原南家(藤原武智麻呂)の菩提寺「栄山寺」があります。入山料を払って川沿いに伸びた境内に入ると直ぐに、数少ない国宝中の国宝「梵鐘」があります。梵鐘の高さは157.4cm、口径89cm、四面に菅原道真撰で、小野道風の書と伝えられる陽鋳の銘文があり、三面に延喜十七年(917年)十一月三日と鋳成の銘文があります。また、梵鐘の龍頭の造りが精巧なことは本邦梵鐘中随一のもので、その均衡のとれた鐘身の美しさと相まって平安時代の金工品中、特に優秀なものと認められ、京都の「神護寺」、宇治の「平等院」の鐘と共に「平安三絶の鐘」として知られています。
 栄山寺(TEL 0747-24-2086)本堂

 「栄山寺」は、古くは前山寺(さきやまでら)とも呼ばれ、藤原鎌足の孫、武智麻呂が、719年(養老3年)に建立したと伝えられ、本堂の前に建つ重文の「石灯篭」は、弘安七年(1284年)の銘があり、しかも各部とも当初の姿をよく残し、この種のものとしては価値の高い遺品で、総高243cm、栄山寺形の灯篭と言われています。また、本堂の本尊は重文の「薬師如来坐像」、室町時代1431年(永享3年)に彫られ、寄木造、膝の厚みもあり、どっしりとした姿で、禅定に結んだ掌に薬壺を持っています。なお、本堂の裏側には国宝の「八角円堂」内陣の柱や格天井等に描かれている仏画の写真を展示しておられます。
 栄山寺の国宝「八角円堂」

 「栄山寺」の本堂を過ぎて更に境内の奧へ進むと、法隆寺の「夢殿」と並ぶ天平建築の国宝「八角円堂」が建っています。藤原仲麻呂が父・藤原不比等と母・蘇我連子女の追善供養のために建立しました。なお、現在の「栄山寺」では、千二百余年の星霜に建立時の荘麗な堂宇伽藍を偲ぶべくもありませんが、今なお、天平時代の豊麗な様式を備えて残る「八角円堂」には内陣の柱絵、格天井に菩薩様像、飛天、伎楽天、宝相華などの装飾画の残片が散見されます。これらは藤原南家の隆盛と、天平盛期の華麗な内陣を彷彿とさせ、時の流れに堪えてきたもののみの放つ消え消えの美を讃えていますが、写真を本堂の裏で展示しています。




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