磐余(いわれ)の道と多武峯街道  その10

 談山神社の国重文「十三重塔婆」

 談山神社の本社社殿、「楼門」の前から西へ石段を下りると、神廟(しんびょう、神の御霊屋)とも呼ぶ国重文「木造十三重塔」が建っています。藤原鎌足の長子定慧(じょうえ)が唐から帰国して摂津(大阪府茨木市)の阿威山(あいやま)に葬られていた父の遺骨を多武峯に移葬し、678年(白鳳7年)唐の清涼山宝池院の塔婆を模して建てた墓塔です。1532年(享禄5年)に再建され、各層は方3間、屋根は檜皮葺(ひわだぶき)で、初重の屋根を特に大きくして、二重以上は軸部を非常に短く造り、頂上に青銅の相輪をのせ、木造十三重塔として現存世界唯一の貴重な建造物の遺構で、元々当社は、妙薬寺(多武峰寺)と云い、明治2年神仏分離令の時、神社になり、十三重塔の西は、970年(天禄元年)摂政右大臣の藤原伊尹(これただ)の立願によって創建された旧寺の常行三昧堂(じょうぎょうざんまいどう)で、室町後期に再建された国重文「権殿(ごんでん)」が建ち、更に西側に国重文の末社「比叡神社本殿」が建っています。
 重文の「比叡(ひえい)神社本殿」

 「談山神社」の境内末社「比叡神社本殿」は、重文で、東向きに鎮座し、1627年(寛永4年)造営、一間社流造、千鳥破風及び軒唐破風(からはふ)付、桧皮葺(ひわだぶき)の小社ながら豪華な様式を備えています。なお、末社「比叡神社」は元多武峯(とうのみね)の麓、藤原鎌足の生まれ故郷である、飛鳥の大原に鎮座していた「大原宮」で、ここに移築され、明治維新までは「山王宮」と呼ばれていました。また末社「比叡神社」に向かって斜め右横にやはり、小社で、「談山神社」の境内末社「神明神社」が鎮座し、祭神・天照皇大御神を祀っています。更に末社「明神神社」の右側には「談山」への石段が延びています。
 談山(かたらいやま、海抜566m)

 なお、末社「明神神社」から「談山」までは、徒歩約10分290mで、石段の上がり口、右下に小さな滝があり、そこを「龍ヶ谷」と呼び、古代には聖なる祭場で、滝横に小社の「龍神社」が鎮座し、神道の水の神と中国渡来の龍信仰が結ばれて祀られています。また、石段を上がって、「談山神社」の直ぐ裏山に当たる「談山」は、古くから「談所(だんじょ)の森」と名付られ、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足が、645年に決行した大化改新に先だって、藤の花の咲き荒れる5月、多武峯に登り、ここで、二人が秘策を練った所とされ、目出度くクーデターに成功して後、その故で、神社の社号の起こりになった山です。
 御破裂山(ごはれつざん、618m)

 なお、「談山」の石段の下、山頂から30m下りた所が三叉路で、そこから脇道を徒歩約10分250m更に登ると、「御破裂山」へ至り、山頂に石の鳥居が建っていて、藤原鎌足のお墓(古墳)があり、古くから国家に不祥事がある時に「神山(御破裂山)が鳴動した」との記録を多く残しています。また、この付近に自生する樹木は植物学上において大変貴重な存在とされ、珍しい木々が沢山植わっています。更に、頂上を巡る様に遊歩道(万葉展望台)があって、石段の下から左へ廻ると、途中にベンチが置かれ、大和平野の一部が木々の間から望遠され、目の下に「大和三山」から「藤原京跡」、北西に「二上山」も望まれます。
 談山神社の国重文「神廟(しんびょう)拝殿」

 また、「権殿」の前から南へ石段を下りて一段低くなった所、「十三重塔婆」の直ぐ下に国重文の「神廟拝殿(旧講堂)」が建っています。定慧和尚が父藤原鎌足公供養のため、679年(白鳳8年)に創建した「妙楽寺」の講堂で、1668年(寛文8年)に再建され、伽藍配置は塔の正面に仏堂を造る特色をもち、内部壁面に羅漢と天女の像が描かれています。なお、毎年11月第二日曜日の「蹴鞠祭」は、「神廟拝殿」横の広場で、11:00〜12:00に行われます。また、広場の西側に談山神社の末社、唐破風で美麗な国重文の「総社拝殿」が建ち、更にその西裏には天神地祗、八百万神を祭る「総社本殿」が建っています。
 談山神社西大門跡の「石仏」

 また、「総社拝殿」北隣に国重文の「閼伽井屋」があり、その上の末社「比叡神社本殿」の横から山道を登ったら、中臣鎌足と中大兄皇子(後の天智天皇)が蘇我入鹿討伐を密談した「談所(だんしょ)が森」、更に「御破裂山」へ至りますが、「総社拝殿」の南にある「祓戸社」の前を通って参道へ出て、多武峯観光ホテルの前から坂道を西へ上ると、石垣だけが残った「西大門跡」に至って、その北側に「石仏」があり、花崗岩の一石造り出し、半肉彫りで、座高80cm、左手は甲を表にした弥勒触地印、光背部の左右に文永三年(1266年)八月八日奉造立、大勘進正延大工藤井延清の銘があり、在銘石仏では桜井市最古です。




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