室生と大和富士周辺  その10

大和富士の額井岳(ぬかいだけ)

 額井岳(標高816m)は室生火山群に属し、その山容の美しさから「大和富士」と称され、南側に東海自然歩道、額井岳・戒場山登山道が通り、東麓の山部赤人の墓「五輪塔」から西へちょっと歩き、東海自然歩道から右脇へ逸れ、額井岳登山道を登ると頂上で、西方を見ると南北に走る国道369号線の香酔(こうすい)峠を挟んで香酔山(標高799m)、貝ケ平山(標高822m)、立割山(標高767m)が連なり、貝ケ平山は大昔海底が隆起した山なので貝の化石が観られ、また、香酔峠を北へ下りバス停「吐山南口」西側や、更に下ってバス停「吐山清水」の東辺りは、県天然「スズラン群落」で自生スズラン南限地です。
額井岳南麓に鎮座する「十八神社」

 額井岳登山口から東海自然歩道を更に西へ行くと、途中少し北へ奥まった棚田の中程に白いコンクリートの鳥居が見え、なだらかな石段の奧にも赤い鳥居が見える高台に平屋が建っていて、その拝殿の裏上に小さなお社の「十八(いそは)神社」が鎮座しています。往古には、極楽寺(現在は廃寺)の鎮護社でしたが、後に宇陀市榛原額井の産土(うぶすな)神として崇敬されて現在に至り、祭神は、神倭伊波礼毘古命(神武天皇)、日本書紀によれば神武東征の時、宇陀市榛原山路の伊那佐山(標高637m)を偵察陣地とした皇軍がかなり疲れていると、そこへ額井の先祖、島津鳥鵜養(しまつとりうかい)が援軍に駆け付けました。
法華宗「青龍寺」

 「額井岳」の麓を更に西へ歩き、国道369号線に出くわすとバス停「玉立橋」です。そこから更に西へ歩き、鳥見山(標高740m)の方へ登って行くと、北の香酔山(こうすいざん、標高799m)の山懐に抱かれて建つのが「青龍寺」で、かっては真言密教の道場として栄えた古刹で、玉立山「青龍寺」と号し、京都市右京区御室大内町に在る真言宗御室派の大本山仁和寺(にんなじ)の末寺でした。なお、弘法大師の空海が留錫(りゅうしゃく)した霊場とも伝えられ、昔は堂宇が12坊も存在していたらしく、今も寺域の周辺に堂坊に因む小字名が多く残っています。また、香酔山の山腹に大日如来と刻まれた巨石も在ります。
神武天皇縁(ゆかり)の「鳥見山自然公園」

 「青龍寺」から鳥見山(標高740m)の東側麓の杉木立の山道を歩いて南西へ向かうと、東海自然歩道「見晴台」に至って、「鳥見山自然公園」の池の縁に建つ赤い鳥居をくぐり、参道の石段を10段上がると赤い社の「鳥見社」が鎮座しています。ここは、日本書紀によると、神武天皇が日向から東征して大和を平定した後、紀元前656年(皇紀4年)春2月23日神武天皇が詔(みことのり)して「我が皇祖の霊が、東征中に天から降りて眺められ、苦戦をしていた我を助けて下さった。今は、多くの敵を全て平らげ天下は何事も無い。そこで天神を祀り大孝を申し上げる」と神々への祈りの場を鳥見山の山中に設けた場所です。




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