水と緑の「上北山村」  その4
 瀧川寺(TEL 07468-3-0066)

 バス停「北山小原」から小橡(ことち)川沿いに県道226号大台河合線を北へ行くと、小橡川の対岸に吉野七龍泉寺の1つ、曹洞宗王住山「瀧川寺」があります。本尊像底に「応永五年(1398年)」の墨書銘があるから、それ以前の創立と思われるが、草創は明らかでなく、墓地に北山荘司の墓があり、1457年(長禄元年)12月2日赤松の残党・丹生屋帯刀らが北山宮を殺し、神器を奪って逃げたので、村民を率いて追撃し、伯母谷(おばだに)において討ち取り、首と神器を奪回した後、北山へ帰ってから殉死したそうです。なお、境内の南端に北山宮の念持仏であった「阿弥陀如来」を安置する阿弥陀堂が建っています。
 「水分(みくまり)神社」の「ツクバネガシ」

 なお、「県道大台河合線」に戻って、「小橡(ことち)川」沿いに北上すると、「ほたる橋」で、50m先に「水分(みくまり)神社」が鎮座しています。草創は不詳ですが、祭神に天之水分(あめのみくまり)神と、国之水分神を祀り、1450年代(長禄年間)以前の創建です。祭日は、4月13日と11月23日で、当日「ウルシネ」と称する米を各戸2合ずつ出し合い、神供と餅まきをする風習があります。また、本殿横の木立の中に大きな「ツクバネガシ」樹高9m、幹周り3.9m、推定樹齢400年が先の尖った鉄柵の中に植わっていて、樹上には初夏に白い可憐な花が咲く天然記念物の「シシンラン」が着生しています。イワタバコ科の「シシンラン」は、この木にだけ自生し、以前は数十株もありましたけど、心無い人が持ち帰ったので、今では数株しかありません。そしてこのランの花を、天然記念物で絶滅危惧1類に指定された小型の蝶「ゴイシツバメシジミ」の幼虫が食べ、運が良かったら、シジミ蝶の緩やかな飛翔が見られます。
 「小橡(ことち)川」の巨樹「カツラ」

 また、「水分神社」から「小橡川」沿いに北へ行くと、支流の「橡谷(とちたに)川」との合流点の近くに「カツラ」の巨樹が自生しています。樹高20m、幹周り9.2m、推定樹齢200年、全体がひとかたまりになって太い幹を成し、多数の枝が真っ直ぐ上に伸び、根元の直ぐそばを写真の様に渓谷の清流が流れています。葉っぱは、ハート形で、秋になると黄色く染まって良い香(かおり、か)が、連(つら)なって何処までも漂うので、それ故、木の名を「カツラ」と呼ぶ様になったと云われています。なお、「カツラ」は、カツラ科の落葉大高木で、中国と日本の山地深く谷川に沿った岸辺に生え、材は軽くて柔らかく、茎理(きめ)が真っ直ぐで強靭だから、建築材、家具材、彫刻材や楽器などに用いられます。また、天然記念物に指定されている巨樹の「カツラ」は、全国各地に多々あり、奈良県内でも数本の大木が確認されていますけど、いずれも生育地にたどり着くのが困難で、この木の様に人目に触れて容易に見ることが出来ません。
 小処温泉(TEL 07468-3-0256)

 なお、支流の橡谷(とちたに)川沿いに右(東)へ行くと、林道「橡谷西ノ谷線」ですが、右へ行かないで、そのまま北へ向うと、バスは「木和田」止でも、更に小橡川に沿って北上すると、やがて、道が二股に分かれ、左へ行って「左又谷」沿いに村道「二又経ヶ峰線」を通り、林道辻堂山線(冬季通行止)を登ると、「大台ヶ原ドライブウェイ」へ上がるけど、小橡川を渡って右へ行き、右又谷の方へ向うと、秘境の湯「小処(こどころ)温泉」です。大台ヶ原の麓にある湯で、自然石を利用の「岩風呂(渓谷の湯)」と、槇の香りが漂う「木の風呂(大樹の湯)」の2種類があって、四季折々の風情を十分に満悦できる温泉です。
 「くらがり又谷の滝」

なお、「小処温泉」は、平成13年8月にリニューアルオープンし、山村の味を活かして木材をふんだんに使った造で、営業は11:00〜20:00、入浴料金大人500円、子供250円。毎月第2・4火曜日が定休日で、当日が祝日なら、翌日がお休みです。また、「小処温泉」から更に林道を約300m行った突き当たりに「くらがり又谷の滝」があります。最上部は木々に覆われていますが、大地の裂け目のような所にある滝で、落差が約50m以上あり、何段にも重なった名瀑です。なお、ここの水は、「奈良県の名水31」に選定され、「小処温泉」玄関の横に、ここから引いた名水が蛇口をひねると出て、無料で頂けます。



奈良観光表紙に戻る  「上北山村」周辺図を開く  前のページに戻る   次のページに進む