御所市、「巨勢の道」  その10
 国史跡「水沼塚穴(みどろつかあな)古墳」

 川合「八幡神社」からまた南へ行き、「朝町川」を渡り、三叉路を更に南へ行くと、「巨勢谷」の最奥、朝町(あさまち)の集落、右手の大きな門構えの家が「西尾」さんの屋敷で、宅地の裏に「水沼塚穴古墳」があります。径20m、高さ約7m程の円墳で、南に開口する両袖式の横穴式石室を設け、石室は、巨大な花崗岩を積み上げて構築されていますが、内部に棺材などは無く、その所在も不明で、今は小さな五輪塔が花を添えて置かれています。なお、石室の排水施設として土管を敷設していたらしく、同様の土管や、高坏(たかつき)等の土器が、門の横の部屋に展示されています。また、見学は許可を得てからにして下さい。
 国史跡「水沼(みどろ)南(蓮華文)古墳」

 「西尾」さんのお宅から更に南へ行くと、道の直ぐ右側に「水沼南古墳」があります。6世紀後半に築造された直径約25mの円墳で、横穴式石室が南方向に開口しています。石室の全長は、約15mで、玄室は長さ4.6m、幅2.4m、高さ2.6m、玄室の床面に拳大(こぶしだい)のレキを敷き詰め、石室内の玄室と羨道(せんどう)にそれぞれ1基ずつ家形石棺が安置されています。玄室の石棺は二上山の凝灰岩、羨道の石棺は竜山石(兵庫県加古川流域の凝灰岩)を使っています。なお、特に注目されるのは羨道にある石棺の蓋に取り付けられた小口部の縄掛突起で、六葉素弁の蓮華文(れんげもん)が浮彫りされています。
 日蓮宗、南都山「八紘寺」

 「水沼古墳」からまた北の三叉路の所まで戻って、左へ曲がり県道を西へ行くと、左側の「朝町川」に架かる「太子橋」を渡った所に「八紘寺」があります。注連縄を飾った簡素な木の鳥居をくぐり、少し傾斜のある参道を上がると「仁王門」があって、境内に入り右に曲がると、本堂の斜め前に赤い鳥居の社があり、本堂の裏に「六角宝塔」が建っていますが、本堂から東側の山際に上がった所に神社が鎮座して、本殿は、「校倉造」です。なお、「八紘寺」の創建は不詳ですが、昭和23年に登記して開基され、「八紘=八荒」は「荒」が国の果てを意味し、国の八方の遠い果て、地上のありとあらゆる方面、天下、全世界の事です。
 旧村社「大穴持(おおなもち)神社」

 「八紘寺」のちょっと裏(西)へ廻って、細い道を登ると、「唐笠山(標高322m)」の山道で、中腹に「大穴持神社」が鎮座しています。三輪(みわ)明神とも云われ、平安時代の「延喜式」神名帳葛上(かつじょう)郡の「大穴持神社」に比定され、祭神は、大己貴(おおなむち)命。本殿はなく、「ウラジロ樫」と「ネジ木」が御神体で、「大和志」にも「霊畤唯有拝殿華表而不設宮屋以在故実也」と書かれ、桜井市の「大神(おおみわ)神社」と同様、自然神を崇拝する原始的信仰の名残をとどめ、また、背後の「唐笠山」を御神体として遙拝し、山頂に霊石があり、その中に長谷寺式の「十一面観音石仏」が納められています。
 旧郷社「葛木御歳神社(TEL 0745-66-2024)」

 「大穴持神社」からまた県道古瀬小殿線へ下りて、「朝日川」沿いに北西へ上がり、峠を越して、「葛城川」に出くわす1つ手前の道を南へ向かうと、御所市東持田の「御歳(みとせ)山」に「葛木御歳(かつらぎみとし)神社」が鎮座しています。「延喜式」神名帳葛上(かつじょう)郡の「葛木御歳神社」にあたるとされ、高鴨社(高鴨神社)、下鴨社(鴨都波神社)に対して、「中鴨社」と呼ばれ、平安時代の1159年(平治元年)9月2日の東大寺文書(大和国目代下知状案)に「大三歳社」と記され、御祭神は、御歳(みとし)神、大年(おおとし)神、高照姫(たかてるひめ)命で、「古事記」によると御歳神は、須佐之男命の孫で、父が大年神です。また、「古語拾遺」では、大地主(おおくにぬし)神が田を作る時、農民に牛の肉を食べさせたので、御歳神が怒り、蝗(いなご)を田に放って稲を枯らしました。そこで、白猪、白馬、白鶏を奉じて祟りを鎮めると、稲がまた茂ったので、後の祈年祭に、白猪、白馬、白鶏を供えたそうです。
 船宿寺(せんしゅくじ TEL 0745-66-0036)

 また、「葛木御歳神社」の石段を下りて、畦道の方へ真っ直ぐ戻らずに、直ぐ左(西)へ曲がって、突き当たった「葛城川」沿いの道を左(南)へ向かうと、高野山真言宗医王山(いおうざん)「船宿寺」です。奈良時代の720年代(神亀年間)行基が山中の船形岩の上に薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)を祀る庵(いおり)を建て、「船宿寺」と名付たのが始まりで、境内には遠州流の池泉回遊式庭園があり、季節毎に種々花が咲き、1月山茶花、2月寒椿、3月白梅、紅梅、椿、4月上旬は桜、馬酔木、白木蓮、芝桜、下旬は霧島つつじ、白藤、5月中旬平戸つつじ、牡丹、6月上中旬さつき、紫陽花、11月紅葉です。


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