室生と大和富士周辺  その6

室生寺の国宝「五重塔」

 「本堂」脇のなだらかな石段を上がると空海が一夜で建てた「五重塔」が正面に建っています。野外に建つ「五重塔」として我が国最小の「五重塔」で、室生寺では国宝の「金堂」と共に最も古く、平安時代初期の建築様式を示し、建立は修円のいた頃、800年代で、創建以来一度も兵火に遭わなかったが、平成10年9月22日に吹き荒れた最大瞬間風速40mを越す台風7号による倒木で半壊し、その修復が直ぐに成され、国内で桧皮不足の中、境内の山中に植わっている桧約500本から約7.5トンの桧皮を採取し、平成12年10月21日落慶法要が行われました。この塔は、こぢんまりした各階に比べ屋根の張り出し部分が大きいのが特徴で、初重の屋根幅は2.5mあり、上層への逓減(ていげん)率が小さく、高さ16.7mで、「薬師寺の三重塔」の半分しかなく、また通常は他の塔の相輪が水煙であるのに、九輪上に宝瓶(ほうびょう)を置き、更にその上に八角の傘蓋を乗せ、九輪と傘蓋にそれぞれ8個の風鐸を吊り下げています。

 
国の天然「室生山暖地性シダ群落」

 なお、国宝「五重塔」辺りにも春は石楠花(しゃくなげ)が咲き、晩秋の頃には紅葉が風情を添え、軒の朱色と壁の白が絶妙のコントラストを描き、これぞ正に「女人高野」です。また、「五重塔」西側の如意山(にょいさん)は、806年(大同元年)10月空海が唐から持ち帰った如意宝珠を埋めた山で、山頂に国重文の「納経塔」が建ち、昭和21年塔の下から琥珀玉などが発見されました。更に西側の如意山と東側の七重ケ岳の間の山道を「奥の院」へ登る途中、山際にイヨクジャク、イワヤシダ、オオバハナジョウシダの暖地性シダが群生し、ここが我が国における「暖地性シダの北限」、国の天然記念物に指定されています。
 室生寺、奥ノ院の「位牌堂」

 奥ノ院へ登る途中、右の「無明谷」から水が流れ、左の「賽の河原」へ注いでいる所に赤い欄干の「無明橋」が架かり、そこから老杉の巨木が生い茂っている中、386段の急な石段を登ると奥ノ院で、宝形造の屋根の上に石の露盤を乗せた国重文「御影(みえい)堂」と、舞台造の「常灯堂(又は位牌堂)」が建っていて、「常灯堂」の周り廊下から眼下に室生の集落が見渡せます。また、室生寺「本堂」の建立と同時期の鎌倉時代に建立された「御影堂」は、「大師堂」とも呼ばれ、お堂内には弘法大師空海さん自身が作られた「弘法大師像」が安置されて、特に伊賀地方の人々が信仰されたので「伊賀大師」とも呼ばれていました。




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