「大和三山」と「長寿道」の辺り  その1

 久米御県(くめノみあがた)神社

 近鉄「橿原神宮前駅」西口から北西へ行くと、直ぐ「久米御県神社」が鎮座しています。「延喜式(えんぎしき)」神名帳に記載されている「久米御県神社三座」にあてられ、土地の県主(あがたぬし)の祖神を祀る神社です。祭神は、八百万神に先駈けて高天原に最初に現れた「造化三神」の1柱である「高皇産霊命(たかみむすびノみこと)」と、天照大御神が天岩屋戸(あめノいわやと)へ籠もった時、その前で祝詞を奏上された「天児根命(あめノこやねノみこと)」、そして、古代朝廷の軍事を掌った久米氏の祖神「大久米命(おほくめノみこと)」です。また、神社の前に碑「来目邑(くめむら)伝承地」が建っています。
 久米寺(TEL 0744-27-2470)

 「久米御県神社」の前を北へ行くと直ぐ真言宗御室派霊禅山東塔院「久米寺」です。当寺は神武東征時に武でもって仕えた大久米命の末裔で伴造(ともノみやっこ)の久米直(くめノあたい)に率いられた久米部(くめべ)の氏寺が始まりで、後に欽明天皇の御世、葛城の里に生まれた久米仙人が龍門嶽で神通飛行術を修得して、当寺に百数十年間奇住し、また、聖徳太子の弟、来目(くめ)皇子が眼病を薬師如来と観世音菩薩ら「二十五菩薩」に直してもらったので、金堂、講堂、鐘楼、経蔵、大門、五重塔など七堂伽藍を建立し「来目の精舎」としましたが、それに由来した練供養会式(久米レンゾ)が、毎年5月3日に行われます。
 久米寺の国重文「多宝塔」

 かって七堂伽藍を有した「久米寺」の建物は、早くに失われて、現在の金堂、観音堂、多宝塔、御影(みえい)堂、地蔵堂、護摩(ごま)堂などは、ほとんど江戸時代の建立です。なお、「多宝塔」は、718年(養老2年)印度の摩伽佗国の王善無畏三蔵が帝王の位をもって我が国に来朝し、720日の間、久米寺に寄留して、高さ八丈(10.909m)四方の大塔を建立し、三粒の仏舎利(お釈迦さんの骨)と大日経を塔中に納め、当時我が国で最高、最大の塔として広く内外に知られ、その後、800年頃(延暦年間)空海が塔の中で大日経義を感得し、第50代桓武天皇の勅を賜って渡唐受伝の上、帰国後に真言宗密教を宣布しました。即ちここが真言宗根本道場の基礎となった所ですが、現在の「多宝塔」は、桃山時代に京都の御室(おむろ)御所仁和寺(にんなじ)に建てられたものを、1659年(万治2年)仁和寺より移築したもので、初重の内壁に極彩色の装飾文様や仏画が描かれ、中央の須弥壇には「大日如来」が安置されています。
 県文化「益田池の堤」

 「久米寺」から南へ出て、バス通りを西へ向うと、「高取川」の「益田大橋」を渡った直ぐの右(北)側に「益田(ますだ)池の堤」があります。高取川を堰(せき)止めて推定貯水量150万トンの大貯水池を造るために平安時代初期に築かれ、北は鳥屋橋北側、南は鳥坂神社まで約300mの長さがあったが、河川改修等の土木工事や土取りで昔の面影が失われ、今はわずかに堤の一部が残り、10cm〜30cm毎に突き固め徐々に背を高くし、途中に黒灰色の強い粘着力のある土を挟んでいるのが見られ、高さは海抜80m前後で、現在残っている堤の部分では、9m〜10m積み上げられ、幅は広いところで40mに達します。
 宣化天皇身狭桃花鳥坂上陵

 益田池の堤から更に西へ向い、バス停「鳥屋」から南へ入り、高松寺の前を抜けると、馬蹄形の周濠(鳥屋池)に全長138m、前方後円墳、宣化(せんか)天皇の身狭桃花鳥坂上陵(むさつきのさかのえノみささぎ、鳥屋ミサンザイ古墳)があります。宣化天皇は第26代継体天皇の第2皇子、名を武小広国押盾天皇(たけおひろくにたしたてノすめらみこと)と云い、日本書紀によると、明日香の檜隈廬入野宮(ひのくまノいおりのみや)に遷都し、大伴狭手彦(おおともノさでひこ)を朝鮮の任那(みまな)、百済(くだら)に派遣して助け、また、538年百済の聖明王から仏像と経を献上されており、在位4年で崩御しました。
 倭彦命墓「桝山(ますやま)古墳」

 「宣化天皇陵」の濠に沿って左へ廻り、集落を抜けて南へ向うと、前方後円形に垣を巡らし、一辺約85m、日本最大の方墳、倭彦命(やまとひこノみこと)の御陵があります。倭彦命は、垂仁天皇の弟で、彼は垂仁天皇28年10月5日に亡くなって、11月2日身狭(むさ)の桃花鳥坂に葬られたが、そのとき陪臣も御陵の周囲に首を出して生き埋めにされ、中々死なず、数日昼夜泣きうめく声が聞こえ、終に亡くなって腐敗し、犬猫烏に食われ、目も当てられない惨状で、天皇は痛く悲しまれ、後に皇后の日葉酢媛命が亡くなった時、野見宿禰の進言により殉死を禁じて、陪臣の代わりに埴輪を作って並べ、これが埴輪の始めです。




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