こもりくの泊瀬「初瀬街道」長谷寺の辺り  その8

 見廻(みかえり)不動尊

 「長谷寺」から、初瀬川に沿って坂道を1.5キロ登ると、左側の山裾に「見廻不動尊」が祀られています。817年(弘仁8年)頃、弘法大師・空海が豊山の参籠を終って、高野山「金剛峯寺」建立祈願の為、笠山の方へ向われた時、此処で回顧され、真に金剛界・胎蔵界の深理おのずと顕れた秘密荘厳の霊場ゆえ、この山に入る者は心を定め、浄めるようにと、この霊山の護り神である堅固不壊なる須弥山王の上に不動明王(見廻不動尊)の御形を彫られたものと伝えられているので、誰しも此明王の加護を蒙(こうむ)り心地決定を祈るべきだそうです。なお、背後が初瀬山、標高546mで、その西が巻向山、標高567mです。
 奈良県管理の「初瀬ダム」

 「見廻不動尊」の反対側に「初瀬川」を挟んで見えているのが「初瀬ダム」です。比較的小規模なダムですが、洪水調節、河川維持用水の補給、および上水道用水の供給を目的とした多目的ダムで、昭和63年に竣工し、奈良県が管理されています。なお、奈良県が管理しているダムは、いずれも大和川水系に属し、天理市にある「天理ダム」と「白川ダム」、そして「初瀬ダム」の3つだけで、別水系に属する規模の大きな「室生ダム」や「布目ダム」などは、国の水資源公団が管理されています。また、「初瀬ダム」は、重力式コンクリートダムで、大きさは、堤高55m、堤頂長212.5m、堤体積16万5千立方メートルです。
 人工の「まほろば湖」

 「初瀬ダム」を下から見て、更に200m上がると「まほろば湖」の湖面が見えて来ます。「初瀬ダム」によって、大和川(初瀬川)の河谷に出来た人工の湖で、集水面積は24.2平方キロメートルあり、設計洪水位237m、常時満水位221.6m、総貯水容量439万立方メートル、有効貯水容量374万立方メートルです。なお、「まほろば湖」には橋が3本架かっていますが、写真に見えているのは「口ノ倉橋」で、後ろが「鳥見山(標高734.6m)」。また、初瀬ダム管理センター(TEL 07444-7-8540)が管理をしていますが、放流時は、予め放送で知らせて、サイレンを1分間鳴らし、10秒間休みの繰り返しです。
 まほろば湖岸の「天落神六社権現」

 「まほろば湖」に沿って北側を辿ると「口ノ倉橋」「落神橋」があり、橋のたもとに「天落神六社権現」が祀られています。長谷寺縁起文によると昔、雷神が瀧藏権現に祀られていた毘沙門天の持っていた宝塔を取って、天に昇ろうとして落ちた所だそうです。なお「六社権現」は、当地の山に三社、川に三社祀られていた六社の事で、「落神の宮」とも呼ばれています。なお、六社の1つ、川の中の巨大磐座には、古来より味鋤高彦根命を祭神とする祠が祀られ、雷除け、災害防止などの霊験あらたかな神として、厚く信仰されていましたが、初瀬ダムの建設によって、まほろば湖の湖底に水没することになり、当所に遷座されました。
 桜井市白木の「エドヒガンザクラ」

 「天落神六社権現」の直ぐ東、「まほろば湖」の東側にあるバス停「落神権現萱森口」から東へ入ると、途中で道が二股に分かれ、右に行くと鳥見山の中腹、萱森の「高麗神社」の辺りを通って榛原へ出ますが、左へ行くと桜井市白木の「高籠(たかがも)神社」へ至ります。高籠神社の直ぐ東隣、崖の下が旧安楽寺の境内ですが、今は草が茫々(ぼうぼう)と生え、泥濘(ぬかるみ)の山地で、その雑木林の中に桜井市指定文化財「江戸彼岸桜」が植わっています。推定樹齢は300年、樹高20m、幹周り3.7m、地上4mの所で3本の支幹に分かれ、枝は20m四方に張って、樹勢は旺盛で、毎年4月中旬に満開の花が咲きます。




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